2015年8月29日(土) 第29回 中長期的な日本の景気の行方 ― 2030年後までの景気予測 ― 

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第29回  中長期的な日本の景気の行方 ― 2030年後までの景気予測 ― 

2015年8月29日(土)

講  師:村田  治  氏(関西学院大学学長)

1.生野高校の思い出

生野高校での学びによって、その後の人生が変わったと思います。自 治会の制服自由化運動で先生方と遣り合いました。ですから先生から疎んじられていると思ってました。サッカー部の練習で疲れ、自宅に帰ってから寝入ってしまい、気が付いたら玄関に「村田がんばれ!! 奥村林蔵」と書いた紙が置いてありました。小・中学校では家庭訪問しますが、高校ではしません。奥村先生はすごいと思いました。自慢するわけではありませんが、松原中学では成績は上位でしたが、 生野に一緒に進学し阪大に通っている同級生と会いました。彼から「2浪して関学に行っているのは情けないやろ。」と言われました。バカにしているわけではなく、心底心配してくれての言葉なので、本当に重くのしかかりました。自分に対するリベンジのために、大学院に行くことを決めて実行しました。また、 Honesty is the best policy.を座右の銘としています。教員として学生に、正直に接し学生のために一番と思う指導をして来ました。

2.複合循環とは

景気循環論は従来から提唱されていたキチンサイクル(在庫循環)と ジュグラーサイクル(設備投資循環)とクズネッツサイクル(設備投 資循環)の3つの説が有名です。サイクルの名前は最初の提唱者の名 前です。複合循環とは、上記の異なる周期を持った複数の循環運動が 合成されてできたのが実際の景気循環とするのが、「複合循環論」です。 シュンペーター、ハンセンなどが唱えています。

3.村田治君の複合循環論

今までは在庫循環を除く他の2つのサイクルを発生させるメカニズム は必ずしも明らかではありません。それを明らかにし、同一経済変数 を用いて、キチン、ジュグラー、クズネッツの3つのサイクルを同時 検出しました。統計的分析に採用した経済変数は、景気循環の指標と して最も相応しいとの理由から累積DI (内閣府が毎月公表している「景 気動向指数」の中のディフュージョン・インデックス(DI)の月々の 値を累積したもの)、日本経済全体の総需要や生産の指標と考えるこ とからGDP成長率を取り上げました。 その結果、キチン約4.4年、ジュグラー約9年、クズネッツ約17 ~ 19 年の循環周期を不規則変動およびトレンドと共に同時検出しました。 次に、GDP成長率の寄与度分析を用いて、各サイクルの変動要因を明 らかにする中で、GDP成長率のキチンサイクルに影響を及ぼしている のは、従来から言われている在庫投資ではなく設備投資と住宅投資で あると導き出しました。さらに、在庫循環は生産平準化動機ではなく 品切れ同期によって動いていることに加え、ジュグラーサイクルは設 備投資が、クズネッツサイクルは住宅投資が主動因であることを明ら かにしました。そして、その住宅投資は世帯数の増加に少し遅れて現 れることを発見しました。

4.複合循環から見る今後の景気

下の図からもわかるよう に、業況判断DIの複合サイ クルのモデルサイクルは、 2013年までの実際の動きを うまくトレースしていま す。図では、このモデルサ イクルの動きを伸ばして 2030年までの景気の動きを 予測しています。

    

5. 講座参加者の質問から

このモデルサイクルに東京オリンピックは計算済みなのでしょうか?

東京オリンピック決定前の計算なので含まれていません。2020年まではこのモデルサイクルより上向くと思います。その後は落ち込みます。

日本の景気を良くする対策は?

一番影響の大きい住宅投資を増やすために、日本の人口を増やすことです。また、日本には資源がありません。人が一番の資源です。関学の女性の比率は48%です。女性に活躍してもらうことです。

他にも多くの質問がありました。私が参加した公開講座の中で一番質問が多かった講座でした。

(26期 米永和彦)