高60期・高61期 中垣 拳

高60期・高61期

中垣 拳

-マサチューセッツ工科大学(MIT
メディアラボ 博士課程在籍-

2020/10/20

Photo Credit: Mattia Balsamini (WIRED Italia)

生野高校100周年おめでとうございます。僕は、60期で入学し、二年生の夏から一年間交換留学に行ったため、61期として卒業しました。現在は、アメリカ・ボストンの、MITメディアラボという大学院・研究所で、博士課程の学生として、日々の研究に勤しんでいます。30歳目前までずっと学生でいるとは、高校時代からは想像もできません。一応経済的には自立できていて、自分がワクワクすることに全力で取り組めているので、こんな生き方もありかなと思います。 MITは理系・技術系のトップで知られる大学ですが、その中でもメディアラボは理系にとどまらない分野を複合し、学際的な(様々な学問領域を跨ぐ)研究を推進しています。僕は、ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)という、人とコンピュータの相互関係を設計する分野で研究をしています。僕の分野でも、いわゆる理系分野の情報・電気・機械工学のみならず、デザインや心理学、アートなどの知識・スキルも必要とされます。(簡単に言うと、変形するディスプレイやスマートフォンなどの研究や開発をしています。めちゃ楽しいので、ぜひ僕のwebサイトから映像をご覧ください!) 振り返ってみると、生野高校でも「文武両道」という理念が掲げられていました。その後に僕が通った、慶應義塾大学の精神である「半学半教(教えながら学び、学びながら教える)」、その中の慶應SFC(湘南藤沢キャンパス)のコンセプトでもある「文理融合」、さらにMITのモットーである「心と手(学問と実践の両立)」…なるほど、、僕が辿ってきた道は、二つ(かそれ以上)の領域や生き方を同時に推進する「越境性」が、指針だったのだなと、ふと気づきました。ある書籍*では、こういうアプローチを「振り子」に例えて、軽やかに複数の領域の間を行ったり来たりする、これからの時代のデザイン・イノベーションについて論じています。僕自身も、自らの好奇心を純粋なエネルギーにして、新しい領域にも物怖じせず、振り子のように軽やかに研究活動を推進していきたいと考えます。生野高校からも「文武両道」を胸に、たくさんの個性ある「振り子」が生まれ、世界で活躍すること祈ります。

*引用: 『takram design engineering|デザイン・イノベーションの振り子』 (現代建築家コンセプト・シリーズ18), LIXIL出版 ( 2 0 1 4 )


Profile
中垣 拳


インタラクションデザイナー、HCI研究者。MITメディアラボ博士課程に在籍、Tangible Media Groupに所属。変形するインタフェース・ディスプレイに関する研究に従事、そのようなインタフェースによる人の身体的知覚・体験のデザインに好奇心を持つ。ACM CHI、UIST、TEIなどの学会や、Ars Electronicaなどのアートフェスティバルで研究の発表・展示を行う。主な受賞に、Golden A’ Design Award(2016)、文化庁メディア芸術祭 審査委員会推薦作品(2012, 2017)、国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト(IVRC2011) 総合優勝など。

▼個人HP
http://ken-nakagaki.com

▼所属研究グループ
https://tangible.media.mit.edu

Photo Credit: Mattia Balsamini (WIRED Italia)