高51期 市村 晃一

高51期

市村 晃一

-東京大学宇宙線研究所 特任助教-

2020/10/20

生野高校創立100周年おめでとうございます。また、このように寄稿させて頂く機会を頂き大変有難うございます。51期の私は生野高校を卒業してから20年以上経ちましたが、生野高校での物理の授業が面白く、興味を持つことが出来たことが今の研究者としての私の礎になっていると思います。生野高校では勉強の他にも部活動で八ヶ岳に登ったり、応援団として高校野球の応援をしたりして楽しく過ごしました。大学や大学院では物理学の中でも、なぜこの宇宙が物質ばかりで出来ているのかという、物質優勢宇宙の謎に迫る素粒子物理学に特に興味を持ち、色々な研究室を渡り歩きながらニュートリノの性質について解明する実験や、未発見の暗黒物質を探索する実験など最先端の研究を続けてきました。スーパーサイエンスハイスクールで来られた在学生、卒業生の方も居るかと思いますが、岐阜県飛騨市神岡町の池ノ山という山の山頂から地下1000メートルでは観測の邪魔になる宇宙線とよばれる信号が地上での10万分の1に減ることもあり、スーパーカミオカンデ実験などの様々な実験施設があります。ここで行われた実験で小柴先生、梶田先生と2人もノーベル物理学賞が出ました。(実験施設には普段は中に入れませんが、一般公開が年1回ありますので是非お越しください)最寄りのコンビニからも車で20分かかるような、大阪では想像できないような場所に研究所がありますが、常時50人程度の国内外の沢山の研究者や学生が滞在し、日夜実験データの解析やハードウェアの開発・改良などに励んでいます。ちょうど在校生の皆様が大学院まで進学して修了する2020年代後半には次世代実験であるハイパーカミオカンデ実験もデータ取得始まる頃で、また大発見があるかも知れない楽しい時期になっているかもと思います。研究では思うように進まなかったり、期待したとおりの結果が出なかったり(プログラムに異常があったり測定装置が故障していたり、、、)もよくありますが、忍耐強く着実に原因を追求・解決していき良い結果が出た時の喜びもひとしおです。私の研究の原動力は、研究をしていて楽しいとか面白いという事と、もっと調べたいという興味だと思います。 在校生の皆様も興味を持てることをたくさん見つけて楽しみながら挑戦し、将来羽ばたいていけるよう祈っております。


Profile
市村  晃一(いちむら  こういち)


生野高校卒業後、東北大学理学部物理学科に入学し、2003年4月から東北大学大学院理学研究科物理学専攻に進みました。
東北大学大学院ではKamLAND(カムランド)実験に参加し、「KamLAND実験におけるニュートリノ振動パラメータの精密測定」というタイトルで博士論文を執筆し、2008年3月に博士(理学)の学位を取得しました。
その後カリフォルニア大学バークレー校のポスドク(引き続きKamLAND実験に参加した他、イタリアのグランサッソで行われているCUORE(クオレ)実験にも参加)、大阪大学核物理研究センターの特任研究員(CANDLES(キャンドルズ)実験に参加)を経て現職の東京大学宇宙線研究所  特任助教に2013年8月着任
東京大学ではXMASS(エックスマス)実験やSK-Gd (スーパーカミオカンデ−ガドリニウム)計画に参加し、未発見の暗黒物質の探索を行ったり過去の超新星爆発で発生したニュートリノを観測する実験の準備をしています。2020年2月より東北大学ニュートリノ科学研究センター  助教に着任しKamLAND-Zen実験に参加予定
このように神岡坑内で行われている様々な実験に参加してきました。