村田 忠彦
2020/10/20

生野高校創立100周年、おめでとうございます
高校時代、研究者になるという目標は全く持っていませんでしたが、大学時代に出会った恩師のおかげで、多目的最適化という分野に興味を持ち、博士号の学位を取得しました。多目的最適化では、「あちらを立てれば、こちらが立たず」という競合の問題を取り扱います。ちょうど1つのケーキをどうやって分ければよいか、という問題に似ています。人数分を均等に分ける、というのも1つの考え方ですが、食べる人の体の大きさに合わせて分けるというのも妥当な考え方です。そのとき一番お腹が空いている人を優先する、というのも1つの考え方です。それらの目的の中間をとる、という選択肢もあります。どの目的をどれほど優先するかによって、ふさわしい解が変わるのです。
この分野の最先端では、目的の数を数百や数千に増やした場合に起こる現象が研究されています。面白いことに、目的の数が増えた時には、あらゆる解がなんらかの点でふさわしさを有するようになります。それぞれの解のなにかが優れていることが明らかになるのです。
42期では、卒業後20年を経て、全体の同窓会がありました。出会った同窓生の多様性にとても感激しました。高校卒業後は、それぞれの専門性が高くなるため、どうしても同じような興味関心を持つ友人や同僚が多くなります。高校の時に仲がよかったかどうかに関係なく、それぞれの目的に向かって邁進している同窓生から聞く話はどれも面白く、自分の価値観が豊かになるのを感じました。これこそが社会における多目的最適化の結果であることを実感しています。この100周年の活動を通して同期以外にも素晴らしい卒業生がおられることを知り、私自身の励みになっています。これからも互いに刺激を与えられる卒業生にお会いできることを楽しみにしています。
Profile
村田 忠彦(むらた ただひこ)
博士(工学) 高校42期理事。
1994年 大阪府立大学 工学部 経営工学科 卒業
1996年 大阪府立大学 大学院 工学研究科 博士前期課程修了
1997年 大阪府立大学 大学院 工学研究科 博士後期課程修了
2010年 シカゴ大学計算研究所 客員研究員(〜2011年)
現在、関西大学総合情報学部教授。関西大学政策グリッドコンピューティング実験センター長、進化計算学会理事、IEEE Systems, Man, and Cybernetics Society 理事などを歴任。
専門分野 多目的最適化、社会シミュレーション、ハイパフォーマンスコンピューティング