高21期　前川 弘行（露の新治）

高59期

前川 弘行
（露の新治）

-落語家-

2020/10/20

私の高校生活は、人様に胸を張って言えるようなもんではありません。体も頭も心も弱かった私は、劣等感と無意味な自意識に縛られ鬱々と過ごしていました。大学入試にも失敗し、卒業後もうつろな日々。そんな私が唯一夢中になったのが「落語」でした。「落語家になりたい」。けど現実に対して臆病な私はなかなか踏ん切りがつきませんでした。義務教育未修了者のための学力保証の場「夜間中学」設立運動に関わる中で、やっと踏み出すことができました。けどズッと「情けない時代」を引きずってましたし、落語家になったこともどこかで恥じてました。　2010年10月30日。21期の還暦同窓会が開かれ、幼なじみの幹事に誘われ舞台で話をしました。私の拙い話を同期の方々は笑顔で迎えてくれました。結局こだわって、敷居を高くしてたのは私自身でした。無意味なこだわりが、みんなの暖かさで氷のように解け、15歳の頃に戻って夢のような、楽しい時間を過ごしました。同期生のやさしさが、私の捻じれた心をほぐしてくれたのです。私もすなおになれました。それからは折に触れ、21期の「仲間」が応援してくれました。おかげで文化庁芸術祭に挑戦しようという気にもなりましたし、弟子入り志願や、後輩のお稽古依頼も受け入れるようになりました。今では、ほんまに「生野でよかった！」としみじみ思います。卒業から42年、やっと私に「母校」ができました。（遅いなあ！）残りの時間を「仲間」と楽しく、そして素直に生きてゆきたいと願っています。「願いに生きる」と書いて、願生る(がんばる)と読みます。願生ります。

Profile
前川 弘行（露の新治）

露の新治（つゆのしんじ・本名　 前川弘行。高校21期）落語家。
上方落語協会会員。
1977年、林家染三師匠に入門。
1981年露の五郎門下に移籍。第六回奈良人権文化選奨。第七十回文化庁芸術祭優秀賞。弟子に露の新幸。