2019年9月28日(土) 第37回時習館公開講座 記念講演会「イノベーション(革新)を創造する発想力」 

このイベントは終了いたしました。ありがとうございました。

第37回時習館公開講座 報告

2019年9月28日(土)

「イノベーション(革新)を創造する発想力」

母校至誠ホールにて(開場9時30分 開演10時)
第4回創立100周年記念プレイベントとして開催

高岡 浩三氏 (高30期)
ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEO

創立100周年に向けた第4回記念プレイベントとして、「ホームカミングデイ~もう一度 文化祭~」が2019年9月28日、校内で開かれ、落語会、お茶教室、模擬店、音楽・ダンスステージなど、さまざまな催しが繰り広げられました。

ネスレ日本(株)代表取締役社長兼CEOの高岡浩三さんが「イノベーション(革新)を創造する発想力」と題して、記念講演を行ってくださいました。至誠ホールには満席となる約200人が集まり、今年度に還暦となる同期生たちも多く詰めかけました。難しそうなテーマでしたが、高岡さんの柔らかいタッチのお話に会場は引き込まれながら、今後の日本・世界経済についても学べました。

旧美原町出身だった高岡さんは生野高校にバスで通っていたので、電車通学の友人がおしゃれに見えて、うらやましかったとか。またお父さんを早く亡くしていたため、「学業・就職に専念しよう」とスポーツ部には入っていませんでしたが、「今思い返せば、部活をやっていたらより多くの友人とも交われ、自分の人生も変わっていただろう」と悔やまれるそうです。

高岡さんはマーケティングの専門家として「日本の企業は、それに基づく経営ができていない。利益率は数%という低さで、中小企業の多くが赤字を出しているため、法人税を払っていない」と、構造的な問題点を指摘しました。

経済・業績の活性化にはイノベーション(革新)が不可欠なのに、日本での試みは部分改良に過ぎないリノベーションばかり。そもそも1980年代、インターネット登場によって起こった第3次産業革命を生かせず、日本はその後の暗い30年間を過ごしてきました。

社会生活からも分かりやすく解説してくださいました。チューインガムをかむ人が、10年間で4割に減少。同業に負けなのではなく、「駅での手持ち無沙汰をチューインガムで癒していたが、それがスマホにとって代わられた」というのです。ビールも、同種でなく焼酎に押しやられています。「競合は同じカテゴリーとは限らない」のです。

悲観的な話に終わりません。キットカット、バリスタコーヒーなどの爆発的ヒットによって、ネスレ日本、そして世界のネスレを右肩上がりに導いてきた高岡さんですから、次々と光明を見出しています。社内では、2010年の社長就任以来「イノベーションアワード」という制度を作って、管理職も含めた社員全員が新規企画を提案し、自ら実践し、それを怠る者には人事昇格などもさせません。今や年間、社員数の2倍の5000件の応募があるそうです。

講演のあとの質疑応答では、時間をオーバーするほど多く手が挙がりました。それぞれに丁寧に対応し、「環境を破壊している企業は、生き残れない」「今後は食品業界から予防医学の分野にも力を入れて、飢えと成人病という両極端の人類の課題を解決したい」など、抱負を語られました。

そして最後には、「このイベントの実行委員の方々などには頭が下がります。私たち卒業生が一体となって、母校の100周年に寄付で貢献しましょう」と呼び掛けてくださいました。

                 (高30期 嶋谷泰典)