高34期 栃尾 克樹

高34期

栃尾 克樹

-サクソフォーン奏者-

2020/10/20

私の仕事は、サクソフォーン奏者であり、今も「吹奏楽」に深く関わり続けている。生野高校では迷わず吹奏楽部に入部、多くの時間を部活、練習に費やした。その頃は、サクソフォーンの関わる音楽にしか興味が無かった。サクソフォーンに打ち込み、部の仲間や先輩後輩と切磋琢磨したこの時代が、かけがえのないものであることは間違いない。しかしながら、私は、生野高校生としては褒められたものではなかった。学業成績は下の下、音楽の先生に対してさえ従順ではなかった。話は飛ぶが、大学を卒業する頃から、歌に興味を持つようになった。対象は、主にドイツリートとオペラである。フィッシャー=ディースカウの歌うシューベルトを聴き、衝撃を受けた。管楽器奏者にとって、最も大切な息。その息の表現手段としての最高峰だと感じた。歌曲集「冬の旅」をはじめ、数限りないリートを聴きまくり、それが私の演奏表現の大切な礎の一つとなった。下地があった。僕らの時代の生野の音楽の先生、言わずと知れた金丸七郎先生である。先生は、たくさんの本物の歌を教えてくださった。当時、音楽の授業を取った皆さんはきっと憶えているだろう。私の心にも、何曲かが強く焼き付いていた。私は、最初のソロアルバムの結びに「楽に寄す」を入れた。そして、今年の10月には「冬の旅」全曲を、もちろん、すべてバリトンサクソフォーンで高橋悠治さんのピアノと共に録音する。「冬の旅」の第1曲「おやすみ」に、生野高校の音楽室で触れてから40年弱、「冬の旅」に強く惹かれてから30年以上かかった。金丸先生、そして、生野高校の仲間達、ありがとうございました。


Profile
栃尾 克樹


1963年10月20日生まれ。藤井寺市出身。
1986年、東京藝術大学卒業。同年、第21回民音コンクール「室内楽」第1位。
東京佼成ウインドオーケストラのサクソフォーン奏者としての活動の他、ソロ、室内楽や、映画「電車男」、ドラマ「半沢直樹」などのサウンドトラック、TV-CM等、幅広いジャンルで演奏。
2000年のシドニーオリンピックでは、生野の偉大な先輩、井村雅代コーチ率いるシンクロ日本の立花・武田デュオのフリールーティンで演奏(銀メダル)。現在までに、バリトンサクソフォーンによるソロアルバム5枚、アンソロジーアルバム1枚、アルモS.Q.として7枚、ジャンルを越えたアンサンブル「カラーズ」で3枚等、多数のCDをリリース。近年は、高橋悠治(作曲・ピアノ)、波多野睦美(声)とのコラボレーション、トリオ「風ぐるま」としての活動に力を入れ、本年2枚目のCDをリリースした。武蔵野音楽大学及び同附属高校講師。聖徳大学非常勤講師。

▼ホームページ
http://ktochio.com