仲谷 善雄
2020/10/20
私の高校時代の前半は、目標のない、無気力な時期でした。部活も中途半端、勉強も中途半端。ぼんやりと飛行機の整備士になりたいと思っていましたが、努力をしていた訳ではありません。2年生の冬、ある雑誌に大阪大学人間科学部が紹介されていて、興味を持ちました。どうしても入学したくなり、計画を立てて勉強に集中しました。入学後はバイトや趣味に走っていたのですが、就活をしていた4年生の春に、指導教員から「仲谷くん、研究に興味がありますか?」と聞かれ、企画職に興味のあった私は、一瞬考えて「あります」と答えました。この間の2秒が、私の人生を大転換させました。実は、ある電機メーカーの研究所が人間科学部に興味を持ち、心理学の素養があり、プログラミングができて、避難行動シミュレータを研究する人材を求めていたのです。私の研究室で災害時パニック行動の研究をしていたことも幸いしました。入社後は、理工系の用語や発想に苦労しながらも、人工知能技術を独学し、最先端のシミュレータを開発して、博士号を取得しました。その後は挫折も経験しましたが、45歳で大学に移った後は、文理融合型人材としてユニークな研究をしてきた自負があります。人生の様々な時点で、自分の意向とは無関係の偶然と自身の努力が結びつき、思わぬ展開になることがあります。総長候補者に推薦されたときも同様です。若い皆さんには、チャンスに気付く感性と、そのチャンスを活かす姿勢や努力を大切にしてほしいと思います。それらを支えるのは、豊かな体験です。体験を積んで、いろいろな感情を経験してください。それが感性を豊かにし、人生を前向きに切り拓く基礎力となります。挑戦をもっと自由に。
Profile
仲谷 善雄
1981年3月大阪大学人間科学部卒業。同年4月三菱電機(株)入社。中央研究所、産業システム研究所に勤務。1989年学術博士(神戸大学)。1991年より1年間、米国スタンフォード大学で訪問研究員。コンサルタント会社への出向、システムエンジニアを経て、2004年4月立命館大学情報理工学部教授。2014年情報理工学部長、2018年学校法人立命館副総長(研究・学術情報・国際連携・男女共同参画担当)。2019年より現職。