三宮 真智子
2020/10/20
在学当時、私はいつも心ここにあらず状態で、ぼんやりした生徒でした。中学に比べて授業のペースが速くなり、じっくり考える暇がなくなったため、勉強がつまらなくなり、成績も振るわず将来への漠然とした不安がありました。成績のよくない自分はやはり賢くないのか、世の中に自分にも務まる仕事があるのか、(今はもてないけど)将来結婚相手は見つかるのだろうか、などと余計なことばかり考え、勉強よりも熱心に賢さや自分について考察を深めていた私は、将来自分の生きていけそうな道を探っていました。朝が弱いので会社勤めは無理そうだし、文学や芸術の才能もとうていなさそうだと悟った私は、心理学の研究者になろうと考えました。自分の進路を決めたことで、少し気持ちが明るくなりました。浪人時代には、こっそり中華料理店でウエイトレスをするなど、寄り道もしながら、名前がカッコイイという理由で選んだ学部に、2浪の果てに合格しました。その後は、意外にも道が開けていきました。本当の賢さとは何かを追究し続けた私は、思考力とコミュニケーション力が賢さのベースであり、それを支えるものが「メタ認知」であるという考えに至りました。メタ認知とは、自分を冷静に見つめる「もうひとりの自分」のような存在です。ご興味のある方は、高校を舞台にした拙著『考える心のしくみ:カナリア学園の物語』をご覧下さい。在校生のみなさんには、ぜひメタ認知を働かせて自らを見つめ、自分を活かす道を進んでいただきたいと思います。
Profile
三宮 真智子
大阪大学人間科学部を経て同研究科博士後期課程を単位取得満期退学。
学術博士(大阪大学)。鳴門教育大学助手、講師、助教授、教授を経て、現在大阪大学大学院人間科学研究科教授。専門は、認知心理学、教育心理学、教育工学。
<おもな著書>
『考える心のしくみ:カナリア学園の物語』(単著)北大路書房 2002年
『メタ認知:学習力を支える高次認知機能』(編著)北大路書房 2008年
『教育心理学』(編著)学文社 2010年
『誤解の心理学:コミュニケーションのメタ認知』(単著)ナカニシヤ出版 2017年
『メタ認知で<学ぶ力>を高める:認知心理学が解き明かす効果的学習法』(単著)北大路書房 2018年
▼参考
http://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/4196
http://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/4197
高校生新聞ONLINE(2018.7・8月号)